子どもに関わる“大人”を支援 NGO団体「マレットファン」

タイの教育現場では、先生が懸命に子どもたちと向き合いながらも、
実践的なアイディアが足りずに思い悩む人が多いという。松尾久美さんは
そんな“大人”をサポートしたいと、「マレットファン」を立ち上げました。

「子どもの成長を、“大人”が笑顔で見守るためのサポートが、これからのタイには必要だ」。NGOメンバーとして2004年からタイで活動していた松尾さんは、同じ想いを共有するタイ人のギップさん、ムアイさんと共に2013年1月、タイ国認定の公益法人(NGO)「マレットファン」を創設。タイ国内の保育園、学校、地域、家庭といった現場で、研修会やワークショップなどを開き、大人に向けた多彩な“学び”の機会を提供。子どもたちの育ちを見守る、大切さと喜びを伝えています。

「これまでにタイでいくつもの教育現場を訪ねましたが、充分な教育方法を知らないまま孤軍奮闘し、一人思い悩む先生をたくさん見て来ました。熱意はあるのにアイディアが足りず、悪循環に陥っていたんです。私たちがサポートすることで、笑顔で子どもたちと向き合えるようになれば、子どもたちの豊かな成長に繋がると思ったのがきっかけでした」。

教育に関わる人たちの意欲に応えるため、さまざまな研修会を開催。絵本研究家の加藤啓子さんをはじめ、日本の専門家に依頼したり、おもちゃや教材などを低予算で作れるワークショップを開いたり。実践を交えながら、現場で活かせるアイディアを発信していきます。

その一方で、本と子どもたちの距離を近づける「絵本のひろばプロジェクト」や、日本とタイ両国でのスタディツアーを実施する「日タイ交流プロジェクト」など、より広い視野で、意欲向上に繋がる企画を提案。「日本が培ってきた学びの方法を元にしていますが、日本のやりかただけが正解ではありません。タイの人々に合ったより良い方法を、その都度、3人で話し合っています」。試行錯誤を繰り返しながら、マレットファンの名前は少しずつ、タイ全土へ広がっていきました。

自分に誇りを持つことが
“夢のたね”に繋がります

設立から6年。松尾さんは、活動の手応えを徐々に感じられるようになったと口にする反面、支援が必要な人たちには届いていないという現状を吐露。

「タイ政府が設ける教育予算は増えているのに、ニーズに合わない講習会や研修の開催、教材購入などに使われ、支援を必要とする貧困層や山岳民族の人たちに、その資金が行き渡っていないのが現状です。今はまだ私たちの力が及びませんが、もっと認知度を高め、行政から支援依頼を受けることが目下の目標です。本当に支援が必要な人たちに、資金を届けられる存在になりたい」。

そのモデル事業になったと話すのは、本の楽しさを伝えるべく、2015年にバンコクで開催した大規模な「えほん展」。訪れた教育関係者が「自分たちの街でも開催してほしい」と、チェンライに派生。支持を集め、翌年からは行政の依頼により開催できるように。 「寄付を頂くことはとてもありがたいのですが、それによって、与える側ともらう側という関係が生じてしまう。支援をする側もされる側も、お互いに誇りを持てる新しいカタチを創っていきたいです」。寄付に頼らない、国の資金を使った長期的な支援サイクルを、松尾さんは目指しています。タイの問題は、タイで解決するのがいいと   。

マレットファンは、タイ語で“夢のたね”。「子どもも大人も、自分の夢を実現できると思える社会を創りたい。そのためにも、みんなが自分に誇りを持てるように、寄り添っていきたい」。大人から子どもへ、笑顔は連鎖し、夢のたねが芽を出します。


PROFILE
松尾 久美
Kumi Matsuo
1977年、兵庫県出身。大学時代、中学校でバスケットボールのコーチをし、子どもの現状・教育の在り方に関心を抱く。同時期、スタディツアーでタイの農村の暮らしに触れ、タイと日本の子どもの違いを知りたいとNGOスタッフとして滞在。2013年「マレットファン」設立。在タイ歴14年。タイの好きなところは、人のおおらかさ。


マレットファン
教育支援を行う
タイ国認定の公益法人(NGO)
現場の“大人”が今、求めるテーマに応じた研修会や交流の場を提供。団体設立の様子が綴られた書籍『マレットファン-夢のたねまき-(村中李衣著、新日本出版、2016年)』も好評販売中。バンコク事務所でも購入頂けます。
[問い合わせ]
Telephone: 087-828-7686
Address:290/1 Phichai Rd., Thanon Nakhon Chai Si, Dusit
Website:maletfan.org
Facebook:@MaletFan


編集部より
自分たちの立場を、「現場と行政の橋渡し」と表現していた松尾さん。タイはもちろん、日本に住む子どもたちに対しての働きかけも増やしていきたいと、新たな道筋を話してくれました(山形)

取材・文 山形 美郷


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