舞台をタイから世界へ
気鋭の役者・演出・脚本家


「今、舞台がおもしろくて堪らない」。タイ人の母と日本人の父を持つ
演劇人・谷川翔吾さんの人生が大きく動き出した、ある演出家との出会い。
そして新たな活動場所を求めてスタートを切る彼の覚悟とは。

 

タイで生まれた谷川さんが、演技に興味を持ったのは中学生の頃。タイにいながら日本のドラマが大好きだった幼少期、いつの日からか「ブラウン管の向こう側に行きたい」と思うように。日本の高校時代はプロダクションに所属し、卒業後は劇団員として舞台を経験。タイでの活動を決めたのは、「タイでチャレンジしてみないか」という父の言葉がきっかけでした。同時に、脚本づくりにも挑戦。

「劇団や演劇関係者が少ないタイでは、全部自分でやるしかなかったんです。初めて書いた脚本をタイ人の俳優仲間に見せたら『いいじゃん! あと30分延ばして内容を盛り込めばもっとおもしろくなるよ!』と背中を押してくれました」。

谷川さんが表現したいのは、“何気ない日常”。日々の忙しさの中で忘れている感情や記憶を、舞台を観ることで呼び起こせればと口にします。昨年末に公演した「No moon night No moon day」に込めたのは、ラマ9世の崩御を受けて暗く押し黙ったタイへの希望のメッセージ。フィナーレでは観客が総立ち。役者と一緒になり、泣きながら国歌を唄ってくれたのだそう。「この舞台には使命があると思っています。タイ人にとってずっと残しておきたい作品になってほしいです」。

着実に力をつけてきた谷川さんですが、この1年前まではタイの演劇界の不遇と自分の将来に思い悩んでいたのだそう。このままタイで同じように活動していていいのか……と。そんな悶々とした想いを一掃してくれたのが、世界的に著名な演出家・劇作家との出会いでした。

世界で勝負する決意
フランス人演出家との出会い

「ただただ、美しかった」。衝撃を受けたというパスカル・ランベールさんの舞台を観劇し、初めて師と呼べる人に出会ったと谷川さんは言います。当時、公演のためにタイを訪れていたパスカルさんが、偶然にも谷川さんの舞台を観劇。終演後に「とてもおもしろかった! 僕の舞台を観に来いよ」と誘われた舞台の冒頭から、心を鷲掴みにされたのだそう。パスカルさんが選んだ出演者は、4人の役者と50人のタイ人エキストラ。「タイの路上で生きる屋台や食堂の店主、俳優を志して挫折した人などさまざまな人物が日常のままに登場するんですが、彼らの存在がとても美しかった。メインは4人の役者なんですが、エキストラの人たちも舞台上で一緒に“生きている”と感じました」。本物の舞台を教えてもらったと高揚し、その想いをパスカルさんに伝えたら「君に今必要なのは、演劇界のトップと繋がることだ。作った台本を僕に送れ。日本を代表する劇作家・平田オリザ氏に送るから。連絡を取り合おう」との返事が。それが、昨年6月のことでした。

この出会いを機に、世界を意識するようになった谷川さん。タイの外で勝負することで、なかなか発展できないタイの演劇界に明るい光を照らしたいと思うように。

「タイで舞台を続けることに限界を感じていました。役者が育ちにくい環境や舞台への関心の薄さなど、演劇界を取り巻く問題を何とか変えたいんです。結果は分かりませんが、失敗しても成功しても、僕は脚本に生かせます。経験の全てが舞台の肥やしになると信じています」。

来年には役者として日本公演が決定。フランスへの移住や台湾、北京を舞台にした企画も構想中。追い風を背にした谷川さんに、怖いものはありません。

9月21日から始まる舞台「No moon night No moon day 2017」の稽古風景


PROFILE
谷川 翔吾 Shogo Tanikawa
役者・演出・脚本家。1982年、タイ・バンコク生まれ。14歳の時に父親の仕事の関係で青森へ。24歳でタイに戻り、役者と同時に演出・脚本も担当するように。過去に14作品を公演。好きな言葉は「チャンマン(今を生きる)」。来年1月に日本で行われる舞台「ゴースト」に出演予定。

 


No moon night No moon day 2017

9/21(木)〜10/1(日)の
木金土日、トンローで開催!

2016年10月13日、微笑みの国から微笑みが消えた日のタイの人々についての話。木金は19:30、土日は14:00/
19:30開演。チケットは大人350B、学生250B。会場は「M Theatre(Bluebox Studio)」。日本語、タイ語、英語字幕付き。
[予約・問い合わせ]
Facebook: no moon ninght no moon day 2017
Tel: 087-301-3892(日本語)


編集部より
“翔吾スタイル”と周りから称されるその舞台には、現実と少しのファンタジーが融合された独特の空気感があると言われています。今週から始まる舞台では、どんな気づきがあるのか今から楽しみです(M)

取材・文 山形 美郷


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