お酒に込められた想いを
“酒サムライ”として世界へ


「SAKE」が世界共通語として浸透した今の時代。その普及の一端として
タイ国内で15年以上、啓蒙活動を続けて来た鈴木幸代さん。
昨年11月にオープンした新たな発信地「SAKE FOREST」を訪ねました。

 

入り口に吊るされた杉玉(酒林)、明るくデザイン性の高い店内、それぞれが主役として顔を揃えるお酒。その数120種以上。商品の販売だけでなく、セミナーや試飲会を通して、お酒の歴史や成り立ち、蔵元の想い、そして日本文化を伝えられる場所になればとレインヒル2階にオープンしたのが、“酒林”を意味する「SAKE FOREST」です。

「以前からセミナーやお酒の試飲会などを開いていましたが、どこかに拠点となる場所を作りたいと物件をずっと探していたんです」と話す幸代さんは、日本産のお酒を蔵元から直輸入・卸売・小売する「SCS Trading Co., Ltd. (以下SCS)」の代表取締役。また、全国の若手蔵元で組織する日本酒造青年協議会から称号を叙任された、世界でたった70人しかいない“酒サムライ”の一人でもあります。

「お酒に関わる仕事をしている人で“酒サムライ”を知らない人はいないのではないでしょうか。お酒を通じて、日本文化を世界に発信している人、影響力のある人に与えられている格式高い称号を、私が頂けるなんて思ってもいませんでした。本当に光栄の極みです」。

この称号を叙任されたのは2015年。当時は、SCSを創業して10年以上が経ち、大きな目標も8割ほど達成していた時期。「まだ満足してはダメだ」とお尻を叩かれたような気分でしたと幸代さん。「称号を頂いて終わりではなく、ここからが新たなスタートだと気が引き締まりました」。

蔵元の方々との顔の見える
お付き合いが、私の原点です

酒サムライ叙任直後、今後のビジョンとして頭に浮かんだのが、発信拠点を構えること。SAKEという言葉が一人歩きしないよう、正しい情報を伝えていきたいという想いから、「SAKE FOREST」は誕生しました。

「ひと言でお酒と言っても、それぞれの酒蔵によって材料や工程は一つひとつ異なるため、同じお酒はありません。それを酒蔵萬流(さかぐらばんりゅう)と言うのですが、みなさんにはただおいしいで終わりではなく、その背景にある蔵元それぞれのストーリーをひも解いて伝えていきたいですね」。背景を知っているか知らないかで、お酒の味わいも変わってくる。知ることは、お酒をよりおいしく、奥深く感じるための嗜みなのかもしれません。

その背景を考える時に欠かせないのが、風土や地域性。お酒には、その土地でしか生まれない個性があります。だからこそ、お酒の席では地元話に転じ、意気投合する人たちをよく見かけると幸代さんは言います。

「お酒のご縁は、丸く大きい。これは私が好きな言葉なんですが、本当にその通りだと思います。お酒を介した出会いが、波紋のように外へどんどん広がっていくのを実感しています。私たちが開くセミナーや試飲会が、そんな出会いの場となればうれしいです」。

オープンから3カ月。まだまだやりたいことは山積みだと言い、「まずは少しずつ、自分の中のイメージを形にしていきます」と宣言。年内には、10回以上の試飲会やセミナーを予定しています。

その根幹にあるのは、蔵元との“顔が見えるお付き合い”。「これまでに100蔵以上を訪ね、それぞれの蔵元さんが持つ酒造りへの想いとストーリーを肌で感じてきました。造り手の情熱に自分の想いを重ねて、これからもタイで日本文化のひとつであるお酒を広めてまいります」。

2015年、京都の下鴨神社で行われた「酒サムライ 叙任式」にて

2015年、京都の下鴨神社で行われた「酒サムライ 叙任式」にて


PROFILE
鈴木 幸代
Sachiyo Suzuki
1965年生まれ。2003年設立の「SCS Trading Co., Ltd.」(バンコク)代表取締役。以前から趣味で蔵元を訪問し、焼酎の輸入・卸販売からスタート。15年酒サムライ叙任。バンコク、チェンマイを中心に酒会(和食、タイ料理、イタリア料理)、試飲会等を開催。在タイ25年目。リラックス方法は、お酒、ニャンズ10頭とお風呂。

 


SAKE FOREST

レインヒル2階で120種以上の酒類、取り扱い中!

サッポロビール、日本酒、焼酎、梅酒、リキュールなど日本各地の酒をラインナップ。セミナーや試飲会も不定期で実施。
[問い合わせ]
Address: 2nd Fl., Rain Hill, Sukhumvit 47
Tel.:02-258-4975
営業時間: 10:00〜20:00(日曜定休)
※14:00〜17:00は酒類販売不可
FB: SAKE FOREST


編集部より
これまでひたすらに走り続けてきた幸代さん。今後は少しずつ下の世代に継承していくと言い、今年1月にはスタッフを連れて蔵元を回ってきたのだそう。「現地で何を感じ、学び取ってくれるか」。期待を込めて話してくれました


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