“タイと私”をもっと身近に バンコク国立博物館ガイド

1000点以上の作品を収蔵し、タイ最大規模を誇る「バンコク国立博物館」で
日本語のボランティアガイドが始まったのは、1969年。その活動に参加して
16年の野村祥美さんに、活動への想い、訪れた人たちへの想いを尋ねました。

元副王宮殿だった敷地の一部が博物館として利用され、王室にまつわる伝統工芸品や宗教美術などに加えて、歴代の副王が暮らしていた宮殿や礼拝堂を見学することもできる同博物館。6世紀後半から現代までのさまざまな“時代の象徴”が展示されています。

その日本語ガイド団体として、来年で45周年を迎える「バンコク国立博物館ボランティア・日本語ガイドグループ」に所属し、タイの奥深さを伝える一人が野村さん。「現在、日本語ガイドとして活動するのは、20代〜70代までの約40名。“いいガイドを”と、立ち上げ時の先輩から積み重ねて来た形が今に繋がっています」。

入会1年目は、タイの歴史や伝統工芸品を学び、半年後にデビュー。2年目は仏伝壁画のガイドと運営、3年目は宗教美術ガイドおよびリーダー期として指揮を執り、4年目以降で全体を見ながら自分の勉強と後輩ガイドの指導をするなど、それぞれの年でテーマが設けられています。「3年目までは自分のことでいっぱいですが、それ以降はさらに知識が深まる時期。昔はメンバーの在タイ期間が長く、そのステップを進んでいけたのですが、今は数年が一般的。次に進む前に帰国する人も多く、寂しい気持ちもありますが、メンバーはみんな真面目で勉強熱心。その繋がりは年々深まっています」と、野村さんは目尻を下げます。

人のためが、自分の成長に。
タイ生活の色が一変した

「え? マニュアル(ガイド原稿)はないの?」。入会直後のメンバーは、みんなそう驚くのだそう。ガイドグループではまずそれぞれが勉強し、自分なりのガイド原稿を作るのが初めの一歩。推敲した原稿を覚え、先輩が同行するリハーサルを経て、訪れた人たちの前に立ちます。

ガイド内容は変わらなくても、自分で勉強し、理解して、“自分の言葉で話すこと”が重要なのです。

毎週水・木曜に行われるガイドツアーで与えられた時間は、2時間のみ。3人1組でチームを組み、各テーマを担当します。ただ、その中で博物館の全てを伝え切るのは不可能です。ガイドとして要点を絞り、時間内にわかりやすく伝えること。“来て良かった”と思ってもらえることが大切だと野村さん。

「一生に1回しか博物館に来ない人もいますよね。その1回が、私たちにとって毎回。そう考えたら、間違った情報はもっての外ですし、その貴重な1回を最高にいいものにしたい」とプロフェッショナルな顔を覗かせます。展示品と時代を繋げ、導きながら、「なるほど!」と思ってもらえる“発見と面白さ”を提供する   その目指すべきガイドに向けて、野村さんは日々後輩の指導に当たります。言葉選びや立ち位置、展示品の見せ方、声のボリューム……改善点はさまざまです。

そんな野村さんがガイドを始めたのは、博物館ガイドを見学して、タイのことを何も知らない自分に気づいたから。自分と同じような人に、タイを好きになるきっかけをつくりたい。そうして始めた“人のため”が、自分の成長に繋がっています。

「ガイドを始めて、タイ生活がより色濃く変化しました。もちろん勉強をすることも多く、大変じゃないと言ったら嘘になりますが、やればやった分、自信となって自分に返って来ますし、調べれば調べるほどもっと知りたくなる。もうキリがないんです」。その溢れ出るタイへの好奇心が、訪れた人たちに派生しています。


王宮前広場のすぐ近くにある博物館は、観光地としても人気。外国人は入館料200B


PROFILE
野村 祥美
Yoshimi Nomura
1953年、愛媛県生まれ。旦那さんの仕事に伴い、1984年〜香港、90年〜シンガポール、2000年〜タイで生活。02年から博物館の日本語ボランティアガイドを開始。リフレッシュ方法は、ヨガと読書。タイでお気に入りの場所は、観光客があまり行かない遺跡。南国の大樹が好き。


バンコク国立博物館
ボランティア・日本語ガイドグループ

毎週水・木9:30〜11:30無料日本語ガイド実施中!
1969年以来、タイ王国文化省芸術局の後援のもとに、バンコク国立博物館におけるボランティアガイドをはじめ、講演会や研修旅行、勉強会などさまざまな活動を行う非営利団体です。

[問い合わせ]
Facebook:バンコク国立博物館ボラン ティア・日本語ガイドグループ
Email:hakubutsukan.bkk@gmail.com


編集部より
印象的だったのは、タイの歴史について話す野村さんの楽しそうな表情。ガイドを通して知った幾多ものタイの“一面”。そこで得た生涯の仲間、見つけたタイ生活の軸。入会して良かったと、野村さんは全身で伝えてくれました


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