5年後、10年後を目指して
若きサッカーコーチの挑戦


地元のサッカークラブを飛び出し、ヨーロッパでサッカーの夢を
追いかけた10代。現在は、指導者として日々奮闘中の田中利武さんが、
人生の師から教わったこと、そしてタイの子どもたちに伝えたいことは。

 

「Inf inito Soccer School」のコーチとして、子どもたちと毎日ピッチに立つ田中さん。若干25歳。しかし、年齢で判断するべからず。教え始めてから3年間で生徒の数は一気に増加。いったいどんな魔法を使ったのでしょう   。

田中さんは、「ヨーロッパでサッカーがしたい」という夢を追いかけ、17歳の時にスペインへ。コネもアテもありませんでしたが、必死にトライアルを受けてプロ契約を掴み取ります。けれどその2年後、足首の靭帯を断裂。生まれつき靭帯が細く、ケガを繰り返し、20歳で引退を決意しました。

某鉄道会社に2年ほど勤務した後の2014年に、サッカーコーチとしての夢を抱きます。「仕事が嫌いなわけではなかったんですが、心から興味が沸くことはありませんでした。そして、やっぱり自分はサッカーに関わらないと生きていけないと気づいたんです。どうせ苦労するなら、サッカーで苦労しようと」。

そうしてコーチの仕事を探し、縁あって導かれたのがタイでした。

旅立ちの日。胸の内にあったのは、「もう一度、サッカーを仕事に出来る」という高揚感と、そんなチャンスを与えてもらったという感謝の気持ちでした。

常に目標を持つこと
決して目標を下げないこと

「人としてかっこいい生き方をしなさい」。これは、高校時代に通っていたユースチームの監督から言われ、田中さんが今でも心に刻んでいる言葉です。「監督にはサッカーの技術以上に、あいさつや礼儀、生活態度など、人として大切なことを教わりました」。

そして、常に目標を持つこと。それを達成するためにどうすればいいか、逆算して考えること。何よりも、目標を下げないこと……田中さんは恩師の教えを胸に、欧州でプロ選手になったのです。

「僕はサッカーがうまいわけではありませんでしたが、サッカーが誰よりも好きだという自信はありました。逆に、うまい選手は山ほどいたのに、彼らはどこかで諦めてサッカーから離れていった。ただその差だったんだと思います」。

人生の土台となる考え方を恩師から
教わったように、自分自身も子どもたちに伝えていきたい。いつの日からか、田中さんにはそんな想いが芽生えていたのでした。恩師からは、「自分が教わった練習は、そのまま選手に使わないように」と強く言われたのだそう。その裏には、選手一人ひとりを見て、その時々に最適な練習を自分で考えること、という意味が隠されていたと田中さんは理解します。

Inf initoで一貫して伝え続けているのは、「頭を使ってプレイする」こと。目の前で何が起きているのか、どんな場面なのか、自分はどう動いたらいいのか。しっかり判断する習慣を今から身につけられれば、将来、大きな差となることを知っているのです。また、挨拶や整理整頓、相手や審判への敬意など、礼儀とマナーを重んじるのもInf inito流。その積み重ねが、サッカーにも人生にも繋がると田中さんは考えます。それが出来ればチームを離れても、タイを去っても、きっとどこでもうまくいくと。

「今は、自分にとっても子どもたちにとっても、目標を達成するための“途中”です。5年後、10年後の子どもたちの姿を思い浮かべながら、毎日が真剣勝負ですね」。

そんな田中さんの姿が、子どもたちを強く惹きつけているのでした。

「自分で考えて判断できる」ようにさまざまなシーン別で練習。お互いのやりとりの中で正解を導き出します

 


PROFILE
田中 利武 Toshitake Tanaka
「Inf inito Soccer School」コーチ。1992年生まれ。岐阜県出身。中学生からサッカーを始め、2010年から2年間、スペインとドイツでプロサッカー選手としてプレイ。ケガのため選手から指導者の道へ進み、14年に来タイし現職へ。趣味は読書とコーヒー。

 


Inf inito Soccer School

サッカー・体操クラスで子どもたちを社会のリーダーに!

サッカーがうまくなりたい子には「アカデミークラス」、楽しみたい子には「スクールクラス」を用意。場所は、アリーナ10(トンロー・ソイ10)。大人、女性専用クラスもあり。
[問い合わせ]
Tel:092-775-6418(日本語)
Website:www.orbita.co.th


編集部より
「Jリーグのユースチームにひけをとらない、世界で戦える選手が育つ環境を造ることが今の目標です」と、チームの目標を話してくれた田中さん。そして、その後に教えてくれた個人の目標は…来たるべく大舞台に向けて、力をつけている最中でした

 


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