100年先も人々に寄り添う “開かれた日本人会”を目指して

19歳でタイの文化に触れ、駐在員としてバンコクに赴任。そして40代で再びタイへ。
「私を育ててくれたタイに貢献を」との想いから農村支援プロジェクトを立ち上げ、
歴史ある日本人会に新たな風を吹き込む熊本さん。そこで見つけた、課題と目標とは。

情報化が進む時代の移り変わりに対応しながら、在留邦人の暮らしを支援する「タイ国日本人会」。今年で創設106周年を迎え、会員数約7000名と世界の日本人会の中でも最大規模を誇ります。創刊50年以上の会報誌「クルンテープ」の発行をはじめ、会員同士の交流の場となるイベントなどを運営。熊本さんはそんな同会の事務局長を務めています。

熊本さんとタイの出会いは97年。大学1年生の夏休みに遡ります。「チュラロンコーン大学とのプログラムで1週間ホームステイし、『学生とスラム』というテーマで映像を制作しました。初めてのバンコクの印象は、やはり貧富の差が大きい街だなと。将来移住することになるとは、その時は思いもしませんでしたね」と、懐かしげに当時を振り返ります。

幼少期を海外で過ごし、将来は世界で活躍したいと思っていた熊本さん。大学卒業後は日系大手自動車メーカーに就職し、広報やブランド企画を担当。入社3年目の2002年に念願の海外赴任のチャンスを掴み、再びタイを訪れます。
「当時からタイは自動車産業の集積地。私は女性6名の広報チームに所属し、13カ国を統括するコーディネーター役でした。右も左も分からない新人が、大きなモーターショーから裏方仕事まで貴重な経験をさせてもらえたことは、一生の財産ですね」と目を輝かせます。そうして熊本さんが実感したのが、働くタイ人女性の懐の深さだったそう。「みんな働き者だし、とにかくパワフル。休憩時間に搾乳しながら、仕事は完璧にこなすワーキングママばかりでしたから。私も彼女たちの背中を必死で追いかけました。タイでの経験が、私を成長させてくれたんです」。

タイ国日本人会が主催し、2年に一度開かれる日タイ交流イベント「ラムウォン盆踊り大会」の様子

40歳で迎えた人生の転機。
タイへ、自分なりの恩返しを

古巣を辞め、熊本さんがタイに移住したのは3年前。「成長の機会を与えてくれたタイに貢献を」との想いから、米どころブリーラム県出身の元同僚と共に、同県のオーガニック玄米農家を支援する「Rice is Life Project」を企画。米作りが衰退する農村に2台のミシンを持ち込み、農民に玄米を使った温熱パッドの作り方を指導。米に付加価値を与え、米農家の副収入支援を始めたのです。
「細々とですが、支援プロジェクトを通してタイ社会と繋がれたと感じています。昨年はタイ法務研究所(TIJ)により地域貢献が認められ、温熱パッドが“タイの希望を紡ぐギフト”にも選ばれました。励みになりますし、ライフワークとして続けいきたいですね」と、顔を綻ばせます。

熊本さんの“恩返し”は、これだけに留まりません。「タイに住まわせてもらう移住者だからこそ、役立てることがあれば」と昨年5月、「タイ国日本人会」の屋台骨を支える事務局長に就任。外部オブザーバーを招いた「企画推進部」の立ち上げをはじめ、広告製作や新規イベントの企画といった“改革”に次々と着手しています。「事務局長の大役をお引き受けするなんて恐れ多いのですが…。ただ、企業とのコラボイベントなど蒔いた種がやっと芽を出し始め、まだまだやりたいことも。先人から受け取ったバトンをきちんと次世代に渡すために、頑張るしかないですね」と、さらなる意欲を覗かせます。

今年は恒例の伝統行事「ラムウォン盆踊り大会」の開催などを控え、タイと日本の文化の架け橋としてますます注目される同会。その舵を取る熊本さんの体当たりの挑戦も、まだ始まったばかりです。


PROFILE
熊本 奈々子
Nanako Kumamoto
1975年生まれ、東京都出身。父親の転勤により、6歳でアメリカに渡り現地の公立小学校に入学。帰国後も積極的に海外交流を図り、慶応大学在学時に短期プログラムを利用しタイへ。自動車メーカー勤務を経て、2016年よりタイに移住。タイ国日本人会の事務局長として、辣腕を振るう。LINE(@nihonjinkai)で、最新情報を更新中。趣味はローカル市場巡り。


バンコクすくすく会
1月中なら何度でも無料
体験プロモーションを実施中!
バンコクでの出産・子育てを支援する「バンコクすくすく会」。1月中は、非会員でも日本人会の室内遊び場「すくすくキッズルーム」を無料で利用できる他、1/18(金)に開催の「わんぱくミーティング」といった、各種交流イベントにも参加可能です。詳細は下記まで。
[問い合わせ]
Tel:0-2662-4948(別館)
Email:sukusukubkk@gmail.com
Website:https://sukusukubkk.wixsite.com/sukusukukai


編集部より
伝統ある組織を“改革”するのは、想像以上にハードルが高く、一筋縄ではないことも多いはず。それでも「次の100年に役立つ組織を残したいから」と、静かな情熱を宿した熊本さんの瞳が印象的でした(佐々木)


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  2. 空港というのは“いい気”に満ちているという。その理由は人が移動する所には活発な気運が集まるということらしく、それが空港であればなおさらだと思う。これから空を飛んで海外へ移動する人々が集まるわけだから、当然なのかもしれない。  さて、今ちょうど成田空港の出発ロビーで原稿を書いているのだが、数年前に比べて外国人の数は格段に増えているように感じる。空港内のインフラもどんどん更新されていて、Wi-Fiが簡単に繋がるようになったのはもちろん、スーベニアショップやレストランの充実ぶりにも目を見張るものがある。これはもちろん東京オリンピックを見据えてのことだと思うが、日本だってやればできるのである。保安設備もさらにアップデートされるそうだが、素晴らしく進歩を遂げたのがトイレのユニバーサルデザイン化だ。まだ完成途中だがその片鱗はすでに垣間見ることができ、変な話だがとても過ごしやすい空間となりそうな予感がする。  東京オリンピックが、いろいろな形でいろいろな場所を進化させていく。あの震災をきっかけにしてなんとなく暗かった成田が、もっと“いい気”に満ちてきそうなのは嬉しいものだ。
  3. 日本ではあまり馴染みがありませんが、毎年旧暦の8月15日は「中秋節」と呼ばれる中国の伝統的な祝日です。「春節」などと並ぶ四大祭として知られ、タイでも中国系の人々を中心に、華やかなお祝いムードに包まれます。  今年は9月13日にあたる当日は家族団らんで食卓を囲み、美しい月を愛でるのが一般的です。また、満月に見立てた大きな「月餅」を家族で分け合って食べると、絆が一層強くなると信じられているのだとか。今年は中華街などに足を運び、お祭り気分を味わってみてはいかが?
  4. ブリーラム県に住む女子高生のフォンさんに悲劇が起きた。8月24日、母親がランチのために近所の料理店で購入した10バーツのソムタムを食べたところ、25日の午前4時頃、激しい下痢の症状に襲われた。薬を飲んで一時的に回復したものの、同日12時ごろに再発。その後、ショック状態となり心肺が停止し、病院に運ばれたが、ついに目を覚ますことはなかった。  母親は記者に対し、「その日、娘が食べたのはそのソムタムだけ。原因は生の『プラーラー』のせいだと思う」と涙ながらに訴えている。プラーラーは魚を塩漬けにし、発酵させた調味料で、主に東北部イサーン地域で使われている。記者が問題の店を調査したところ、プラーラーの中にウジ虫が入っていたという。店主のサムルアイさんは「毎日、市場で生のプラーラーを仕入れている。イサーン人にとってウジ虫がいるのは美味しい証拠。危なくない」と話す。  同県保健所の検死では、腸の激しい炎症による敗血症と脱水症状であると判明。フォンさんは過去に腸の病気での治療歴があり、ソムタムの検査結果がまだ出ていないことから、同保健所はソムタムを原因と判断するのは時期尚早と説明する。  一方、食品の基準法令では、虫などの異物混入は禁止されている。「ウジ虫がいるのは美味しい証拠」という店長の主張は、現代の衛生管理基準においては改める必要がありそうだ。
  5. ころんと愛らしい俵型がお気に入り。箸を入れると衣の美味しい音が響いて、とろ〜りとクリームが溢れ出すんです! これぞ料理人の匠の技。いやぁ、いい仕事してますね!
  6. カオサン通りの近くにある「パートンゴー」は、タイ語で「揚げパン」を意味する店名の通り、タイ風揚げパンの専門店です。2018年のミシュランガイドに掲載された実力派として名を馳せています。同店では、パンを揚げた後、さらに焼くことで余分な油を落とし、クリスピーな食感に仕上げています。中でもオススメしたいメニューが「パートンゴー・アイス」。チョコやバニラなど自家製アイスの甘さと、揚げパンのサクサク食感が相性抜群です。一度お試しを!
  7. 個人消費などの内需を中心に、緩やかに成長するタイ経済。しかし、タイ中央銀行(BOT)をはじめとする金融機関では、近年の家計債務の増加傾向について懸念を示している。  タイ国家経済社会開発委員会(NESDB)は2日、今年第1四半期における国内の家計債務残高が、昨年の6.3%増となる13兆バーツ(約45兆億円)に達したと発表した。これはGDP(国内総生産)比の78.7%となり、11兆バーツを記録した2016年12月以来の高水準になった。また同比94.8%と、アジア主要34カ国の中でも群を抜いて家計債務問題が深刻化する韓国に次ぐ結果となり、危機感を感じざるを得ない状況にある。   2017年頃より、頻繁にタイ国内で取り沙汰される家計債務問題。現在は約7千万人の総人口に対し、一人あたり18万バーツの負債を抱えているとされる。また、不良債権の割合を昨年と比較すると、自動車ローンは32.3%増、クレジットカード負債は12.5%増となり、総額は1,274億バーツにまで達するという。BOPではこういった現状を改善するため、今年1月より住宅ローンの融資基準を強化する「LTV(ローン・トゥ・バリュー)」を導入。融資上限を物件評価額の80%とするなどの規制を設け、債務の膨張に歯止めをかける対策を講じているが、大きな成果には至っていない。 「このような債務膨張の背景には、世界経済の鈍化に加え、豊かな暮らしを求めるタイ人のライフスタイルの変化がある」と警鐘を鳴らすのは、BOTのティッタナン金融政策委員だ。同氏によると、若年層を中心に安易に債務を抱える国民が増加傾向にあり、とりわけ返済困難な状況に陥る低所得者層が急増しているという。また、こうした人々は通常の2倍以上の高金利で金銭を貸し付ける違法金融業者を利用することが多く、タイ経済へさらなる悪影響を及ぼすだろうと言及。融資規制について、今後も強化を図っていくとしている。  政府は先月、3,160億バーツの予算を投じて国民支援に着手すると明言したばかり。どちらも今後の動向と行く末に注目が集まる。

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  1. 多数のメディアに紹介され、タイの王族も来店したことがあるという中華料理店「ペ・フーチャラーム」。特にオススメなのが、魚の浮袋入りスープ「クラポプラー・ナムデーン」です。甘じょっぱく、とろみがかかったあんかけスープに、プルプル食感の浮袋、シイタケ、カニの身がたっぷりと入った一杯は絶品です。リーズナブルな価格もさることながら、昼から深夜1時まで営業しているのも嬉しいポイント。ぜひ一度、足を運んでみて!
  2.  事件が起きたのは6月22日の夜。バンコク郊外で帰宅途中の女性が突然、38口径の拳銃で胸を撃たれた。幸い女性は一命を取り留めたが、約1カ月半後、さらなる悲劇が襲う。殺害依頼の容疑で逮捕されたのはなんと、最愛の一人娘だったのだ。 「母の日」目前の8月9日、警察は実行犯の男2人と殺害を依頼した女1人を逮捕したと発表。女の名は被害者の実の娘ターイ(25)。事件当時は祖母を含む3人暮らしだった。  調べに対し娘は、「母の遺産で恋人を釈放させたかった」と動機を供述。事実、被害者は総額30万バーツの保険金と先祖代々の土地約8万㎡を有し、それらを相続できるのは娘のターイ容疑者ただ一人だった。また、交際相手のキッティポン(30)は現在、麻薬売買の罪で服役中。同容疑者と共謀して友人2人に殺害を依頼したと見られている。  世間は当初、このような愚行にさぞや驚いているだろうと哀れんだが、母親は自らが娘に殺害されることを予期していたという。自宅の水筒内でアリが大量死しているなど、2度も不可解な事件に遭遇していたためだ。しかし平静を装い、娘の動向を見守っていたのだという。  母のウアムドゥアンさんは「今はまだ娘に会いたくない。今後のことは法の裁きに委ねる」としながらも、「こんなことをされても、自分の子どもを嫌いになる母親なんていない」と、娘への慈愛の想いを吐露した。  再び母の大きな愛に気付かされた娘は今後、どう償っていくのだろうか。
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