幼少期の体験で人生が変わる 「できた!」を導くスポーツ博士

日本の大学で20年以上、体育講師として勤めながら子どもの運動能力を 引き出す方法を追求し続けてきた柳井宗一郎さん。タイ移住後に開設した屋内スポーツ教室「WAKUWAKU GYM」で思い描く、子どもたちの未来とは。

時に、保護者から“柳井マジック”とも囁かれる独自のメソッドを持つ柳井さん。約1時間のレッスンでは、親子での組み体操や手押し車、三点倒立、鉄棒など次々とメニューが切り替わり、子どもたちを“ワクワクタイム”に引き込んでいきます。

そんな柳井さんが大学講師から一転、幼児体育の道へと進んだのは、ある学生たちの声が始まりだったのだそう。

「運動が苦手という学生たちに、少しでも授業を楽しんでもらえたらと話を聞いていたら、『小学校から高校までの12年間、ずっと体育の授業が苦痛だった』という言葉が飛び出して。そんなに長い間、辛い日々を過ごしてきたのかと衝撃を受けた出来事でした」。当時、柳井さんも授業の中で運動ができる人とできない人の差が縮まらないことに歯がゆさを感じていた時期でもあり、「何歳まで遡れば、その差を埋められるのか」と考えた末、幼児体育に辿り着いたのでした。

柳井さんは大学と並行して、幼稚園での運動指導を志願。子どもへの接し方、視線の集め方、サポートの仕方など発見の連続だったという現場で、特に驚いたのが成長スピードだったのだそう。

「例えば、鉄棒前回りができなくて泣いていた子に少しコツを教えただけで、次に会った時には一人で楽しそうに回っているんです。たった1回の成功体験によって、ただの鉄の棒が“遊び場”に変わる。大学生までいくと、染み付いた苦手意識を取り除くまでに長い時間を要しますが、幼少期の働きかけでそれを防げるのではと、希望が見えた気がしました」。


鉄棒、うんてい、マット運動、トランポリン、ボルダリングなど多彩なプログラムで運動能力を引き出します

周りと比べるのではなく過去の自分を更新する

活動拠点を日本からタイへ移し、「WAKUWAKU GYM」をスタートしたのは2009年。当初は、外で気軽に運動ができないバンコクの環境に驚いたと話す一方で、自身の経験を多くの子どもたちのために活かせると実感したと言います。そうして、スポーツ生理学や運動学といった専門知識と、実践経験を基に生み出した“柳井式”を提案してきました。

日本時代と併せ、向き合ってきた子どもは延べ2000人以上。幼少期の子どもたちは、手を出し過ぎると満足感を得られない反面、サポートが足りないと動きを止めてしまうため、個々の“頑張れば達成できる線”を見極め、それをしっかりと提示することが大事だと言います。

「うんていや鉄棒は『あと一歩、頑張ればできる』目標を、一度コツを掴めばどんどん跳べるようになる跳び箱には、少し高めの目標を設定する。達成できた喜びを知ることが楽しいという気持ちに繋がり、自発的な行動を呼び起こす。我々はその“夢中になるスイッチ”を押すだけ」。

柳井さんはこのサイクルを大切にすると共に、自分自身に挑む重要性を口にします。あの子より速く走れないからダメではなく、過去の自分と戦い、「できた!」を更新することが何よりも成長に繋がるのだと。「周りと比べても、キリがないですから。この積み重ねが自信になり、内面にまで変化が現れるんです」。引っ込み思案の子が明るくなったり、何にでもチャレンジするようになったり。そんな変化を幾度となく見てきたと目尻を下げます。

「運動嫌いになっていたかもしれない子がWAKUWAKU GYMをきっかけに、その後の人生を豊かに過ごせたら、私にとって本当に幸せなこと」。そんな責任とやりがいを実感しながら、柳井さんは子どもたちの可能性を広げていきます。


PROFILE
柳井 宗一郎
Soichiro Yanai

東京都生まれ。医学博士。中央大学法学部卒業〜筑波大学大学院修士課程体育研究科修了〜東邦大学大学院博士課程医学研究科特別研究生修了。大学の非常勤講師として体育の授業を担当。「ちどり幼稚園」「アイインターナショナルスクール」にてスポーツ教室を主宰。2009年2月、タイに移住し、同年9月に「WAKUWAKU GYM」オープン。


WAKUWAKU GYM
すべては子どもたちの「できた!」のために

2歳〜小学生までの子どもたちを対象にしたスポーツ教室。多様な動きを取り入れた独自のメソッドで、子どもの運動能力を最大限に引き出します。まずは無料トライアルを。詳細は下記まで。
[問い合わせ]
Address:5th Fl., Bio House, Sukhumvit Soi 39
Telephone:085-381-7778、087-329-8708
Website:www.wakuwakugym.com/


編集部より
「もっと、できることはないか」。十人十色の子どもたちだからこそ、そのスイッチを押す方法もさまざま。常に一人ひとりを見つめ、模索を続ける“柳井式”に終わりはありません


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