歴史を読み解き、思考を深める 「日本近現代史を識る会」主宰

在タイ歴28年。日系企業の社長として任務を全うした後、縁あって始まったバンコク大学観光・国際学科での22年の講師生活。外からも内からもタイを見つめて来た横山正明さんが唱える、日本近現代史の必要性とは。

横山さんが初めてタイに降り立ったのは、今から50年前。海外への渡航が珍しかった当時、勤めていた製紙メーカーの出張のため訪れたのだそう。「当時のタイは、今とまったく別世界。空港は小さく、都心に出るまでは赤土と平原ばかり。高いビルやコンドミニアムもなく、日本人にもほぼ会わない。仕事で訪れていだけのタイに、こうして28年も住むようになるとは思いませんでした」と笑います。

1991年、赴任によりタイに渡った横山さんは5年の任期終了後、その人脈からバンコク大学講師の依頼を受け、観光・国際学科の教壇に立つと共に、日本から訪れる短期留学生をサポート。その中で、日本人学生の意識の低さを目の当たりにしたことが「日本近現代史を識(し)る会」(以下、識る会)開設のきっかけのひとつだったと振り返ります。

「タイ=発展途上というイメージを引きずり、英語もタイ語も不自由なままやって来る日本人学生を多く見てきました。そんな様子から、学内での日本人に対する評価は芳しくなく……。タイにおける日本の立ち位置は昔のままではないという現状を、しっかり受け止めてほしい」。それは、タイを訪れるビジネスマンも同様。世界から見た日本を改めてするためにも「日本近現代史」を学ぶ必要があると、2012年に「識る会」を立ち上げたのでした。


バンコク大学講師時代の教え子たちと

終わりなき旅のようにやればやるだけ発見がある

当時から日本の近現代史に明るかった横山さんですが、識る会の開設に当たり、書物を資料に徹底して勉強。太平洋アジア戦争、ポツダム宣言の受諾など、戦争終焉に至るまでの経緯や戦略、政治背景といった当時の出来事と思考を読み解くことで、論理的思考が鍛えられていったと言います。「過去を深く理解することにより、日本人としての“今の課題”が見えて来る。島国という背景から閉鎖的な思考に陥りやすい我々にとって、過去の道筋を辿り、幅広い見解を持つことが論理的思考に繋がると感じています。近現代史は一石を投じるきっかけになる」と、その重要性を口にします。

開設当初は横山さん自身が講師となり、「マレー上陸作戦」「極東国際軍事裁判」などさまざまなテーマを提示・解説してきましたが、近年は会員メンバーが自ら関心のあるテーマを発表する形式に変化。これまでに取り上げてきたテーマは100に迫るほどだと言い、中でも日本とタイの関係性、特にタイの外交の上手さに気づかされたのだとか。

「例えば、江戸時代前期にタイで暗殺されたと言われる山田長政氏。表面上は笑顔で穏やかなタイ人ですが、外国人が出しゃばりすぎると静かにいなされることも。常に自国が主導権を握る体制構築は、巧みですね」。時に、泰麺鉄道が通るカンチャナブリを訪れたり、太平洋戦争時の日本軍の進路を追いかけてシンガポールに行ったり。各メンバーの“識る”に対する熱量に刺激をもらっているのだと、顔をほころばせます。

今年1月から新たな取り組みとして、子どもに向けた勉強会をスタート。かねてから、若い世代にこそ学んでほしいと願っていた横山さんの想いが実現しました。「自分たちの国を語れないと、世界に相手にされない。子どもたちが興味を持てるように、私自身の教え方も工夫が必要です。それも、新たな挑戦ですね」。

歴史を識らずに未来は創れない。横山さんの提案が、次の世代を育みます。


PROFILE
横山 正明
Masaaki Yokoyama

1935年、東京都生まれ。慶応義塾大学卒業後、製紙メーカーに入社し、初めての海外出張がタイ。その後、外資企業や人材派遣会社などを経て91年、パソナタイランド代表取締役に就任。96年〜2018年、バンコク大学観光・国際学科講師として勤務。12年、「日本近現代史を識る会」創設。趣味は観世流能楽。


日本近現代史を識る会
毎月最終土曜に定期講習会を開催中

約30人のメンバーが各々気になるテーマを設定し、それぞれが発表。幅広い視点から、知識・見識を深める場です。子どもに向けた講習会も学習塾「アリオリオ」で開催中。詳細は下記まで。
[問い合わせ]
Address:サロン・オ・デュタン (スクンビット・ソイ35)
Hours:14:00〜
Email:[email protected](横山)


編集部より
「本当にキリがない。だから毎日、楽しいんです」と目を輝かせる横山さんのご自宅には壁一面、史料が並んでいるのだそう。現在、寄贈先を探しているとのこと。必要とする方は上記までお問い合わせを(山形)


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