【亜州ビジネス編集部】
陸上交通庁(LTA)は10日、電気自動車(EV)の普及促進を目的とする車両排出スキーム(VES)とEV早期導入インセンティブ(EEAI)の延長を発表した。当初は両制度とも今年末で終了する予定だったが、環境目標達成に向けて適用期間を延ばし、制度内容を見直す。ハイブリッド車(HV)はVESの対象から外す。
VESは2027年12月まで2年間延長する。新制度では純EVのみ優遇対象とし、HVを除外。また排出量の多い車両に対する課徴金を引き上げ、最も汚染度の高い区分では26年に3万5000シンガポールドル(約400万円)、27年に4万5000シンガポールドルとする。
EEAIは来年末まで延長後に廃止する。リベート額は従来の上限1万5000シンガポールドルから7500シンガポールドルへと半減する。
LTAは優遇策の見直しについて、EV普及の進展とエンジン車との価格差縮小を理由に挙げている。こうした中、EV購入者が受けられるリベートは、26年に登録した場合に最大3万シンガポールドル、27年に同2万シンガポールドルとし、現行の4万シンガポールドルから縮小する。
政府は40年までに化石燃料車を段階的に廃止する方針を掲げており、今回の措置もその一環となる。ストレーツタイムズによると、25年第1四半期には新車販売(約1万800台)の約40%をEVが占めるなど、普及は加速している。一方でLTAは、制度改定により短期的に車両購入権(COE)価格が上昇する可能性を指摘し、消費者に慎重な入札を呼び掛けている。
こうした政府の後押しにより、EV市場では中国メーカーの優位性が一段と強まるとみられている。最大手の比亜迪(BYD)は20年の販売台数が3台に過ぎなかったが、21年に89台、22年に786台、23年に1416台、24年には6191台と急成長。競争力のある価格設定に加え、自動運転支援やコネクティビティー機能など先進装備を備えることが消費者の支持を集めており、今回の優遇延長措置でさらに勢いを増すとの見方が出ている。





