アカ族が育む自然の恵み
森のコーヒー豆を世界へ


2012年に、タイのコーヒー博覧会で最優秀賞を受賞。現地に暮らす山岳民族・
アカ族が森の中で育んだ無農薬のアラビカコーヒー豆は、年々その生産量を
増やしながら今中さんとともに新たな扉を開こうとしていました。

 

チェンライから車で北へ2時間。ミャンマーとの国境沿い、標高1500メートルほどの山間にあるのが「Phaahee Coffee Farm」であり、今中健太郎さんが経営する「ORIENTAL FA’S」コーヒーの産地です。今中さんはここで収穫されたコーヒー生豆を焙煎し、販売しています。生産者は、この地に昔から住むアカ族の人たち(約80世帯、500人強)。今中さんが初めてこのコーヒー農園を訪れたのは、2009年のことでした。

農園の面積は約400万平米。この辺り一帯が、約35年前まではケシの実(アヘンの原料)の有名な栽培地だったと聞いたら驚くでしょうか。アヘン撲滅を目的として、タイ政府や王室が中心となって始まったプロジェクトがコーヒーの栽培でした。そんな歴史を経て、私たちのもとにコーヒーが届けられています。

農園が何より大切にしているのは、“自然との共存”です。森の生態系を壊さないよう、樹々の隙間を埋めるようにコーヒーの樹は植えられています。多様な生態系があるため、コーヒーの葉が食べ尽くされることはないと今中さんは言い、だからこそ無農薬で栽培できるのだそう。今中さんがこの地に移り住んだのも、そんな自然に惹かれたから。「森の中で育つコーヒーの力強さに感銘を受けました。今思えば、ひと目惚れでしたね」。

何かを食べるということは
その背景も一緒に食べること

今中さんは、駐在員として2003年に来タイ。バンコクで働きながらも、“田舎への憧れ”を抱いていたと言います。「生まれは兵庫県尼崎市で、学生の頃は光化学スモッグの問題が、後にはアスベストの問題などがあった工業地帯でした。当時、両親の田舎に行くとホッと安らぐ自分がいたんです。そんな記憶があるから、チェンライに来たのかもしれません」。

この地で暮らすアカ族の人たちとのコミュニケーションに苦労も多かったのではという問いに、そんなことはなかったとひと言。「農園を紹介してくれた焙煎屋が間に入ってくれたこともありますが、アカ族の人たちの素朴でフレンドリーな性格が、私を受け入れてくれました」。

そう話す今中さんは、コーヒーの質を安定させるため、水分値を測る機械や焙煎機を導入したり、より高いレベルを知ってもらうためスタッフを日本へ研修に連れて行ったりと、できる形で農園をサポート。年によって変動はあるものの、年間生産量は設立当時の2倍に。けれど、今中さんがこだわるのは量ではなく、これまで築かれてきた農園のやり方を尊重し、森と共存していくこと。それを守ることが、コーヒーのおいしさに繋がると信じています。「うちのコーヒーは全体的なバランスがいいんです。深煎りでもすっきりした苦味で、浅煎りでも嫌な酸味がない。自然本来の甘みを感じられます」。

昨年末、農園の近くにある村の高台に、小屋を改良したカフェがオープンしました。今後、月に一度は自然に影響を及ぼさない範囲で農園見学ツアーを開催予定だと言い、また新商品としてコーヒーの実を乾燥させたお茶を準備中と、やることは山積みなのだとか。

「コーヒー豆を育てて終わりではありません。手摘み、選別、焙煎、パッキング……アカ族の人たちから私へ。リレーのように繋がり、商品が生まれています」。人と自然が共に生きる形を、今中さんはこれからも教えてくれるでしょう。

「通い続ける中で、森の変化とコーヒーの出来上がりが分かるようになりました」(今中さん)

 


PROFILE
今中 健太郎 Kentaro Imanaka
「ORIENTAL FA’S CO., LTD.」代表取締役。1976年生まれ。兵庫県出身。2003年、駐在員として来タイ。2009年、同社設立。2015年、兵庫県に日本支社を設立し、現在に至る。リフレッシュ方法はゴルフ、温泉。タイ人の奥さんと2人の子どもを持つ。座右の銘は「色即是空 空即是色 宇宙即変化 人生即主観」。

 


ORIENTAL FA’S

タイ国内でも日本でもウェブサイトで注文可能

コーヒーをはじめ、チェンライ産の日本米ランナノヒカリ、釜揚げ古代塩、日本茶・ほうじ茶を販売。詳細は下記まで。
[問い合わせ]
Tel:08-9826-1166(日本語)
08-1585-3964(タイ語)
E-Mail:orifas_th@orifas.com
Website:orifas.com


編集部より
「こんなに背の高いコーヒーの樹は他ではありえないですよ」。農園を一緒に歩きながら、そう話してくれた今中さん。人の手によって刈り揃えられるのでなく、自然のままに育てられたコーヒーの樹を誇らしげに、そして愛情たっぷりに紹介してくれました。

 


この記事をSNSでシェア!

一番上へ戻る