タイの伝統歌謡を多くの人に 「ルークトゥン」を伝える日本人

ジャズやブルースから、演歌、ポップス、ロックまで、ジャンルの枠にとらわれない
タイの伝統歌謡「ルークトゥン」。その音と文化に魅了され、情報を発信するのが
そむちゃい吉田さん。20年以上前に遡る出逢いと軌跡を今、改めて伺いました。

「音とメロディに“タイを感じた”」―――。ルークトゥンとの出逢いをそう表す、吉田さん。初めてタイに来たのは、1992年。居心地の良さに惹かれ、その後もタイを訪れていた時に、たまたま路上で耳にしたのだそう。ルークトゥンという言葉もまだ知らない頃に、純粋に心が揺さぶられたと振り返ります。「ルークトゥンって、ひと言で言い表せないほど曲調が幅広い。踊りあり、ショーありの壮大なエンターテインメントなんです。けれど“声調”に対しては厳格で、昔からのタイ語を守っています。だからこそ、その歌詞と響きにタイ語本来の美しさが感じられる」と、その魅力を改めて口にします。当時、タイ語が分からなかった吉田さんですが、ルークトゥンの曲が入ったカセットテープを買い漁り、何度もリピート。耳から聞こえた音をカタカナに起こし、その意味を調べながらタイ語も習得していきました。

1999年にタイへ移住した後も、ルークトゥンへの興味は増すばかり。仕事の傍ら、話題の歌手はもちろん、その歴史や成り立ち、変遷まで徹底的に調査。「もともと凝り性なんですよ。気になったらトコトン突き詰めたくなる。それに、小学校の頃から洋楽を聴いたり、中学校からバンドを組んだり、“人と違うことをやりたい”という気持ちが強かった。ルークトゥンを紹介する日本人がいなかったこともあり、『それなら僕が伝えよう』と思ったんです」。

そうして2003年に立ち上げたのが、ルークトゥンを紹介する日本語ウェブサイト「ルークトゥン・タイランド !」でした。

今一番のお気に入りというブワ・カモンティップさん(中央)に誕生日のお祝いをされる吉田さん

知れば知るほど奥深く、
底知れない魅力がある

多い時は1カ月のうちほぼ毎日ライブへ足を運び、これまでにサイトで紹介したルークトゥン歌手は数えきれないほど。タイ語での情報発信がほとんどだという業界内で日本人のファンは稀有であり、吉田さんの存在はタイ人の間で認知されるように。「ライブ会場で声をかけられたり、プロデューサーや歌手から直接問い合わせを受けたり。今ではFacebookやYouTubeチャンネルも駆使し、動画を交えながら紹介しています。日本人にも、少しずつルークトゥンが知られて来ましたね」と、手応えを実感しているそう。

そんな吉田さんが数多くの歌声に触れ、気づいたのは「ルークトゥン歌手の歌唱力には“ハズレがない”」ということ。どんなジャンルの歌手でもレベルの差があって当たり前な中、ルークトゥンは全員が上手いと語気を強めます。「以前、地方の小学校で歌合戦を見る機会があったんですが、とにかくレベルが高かった。そんな中からプロになっているのだから、下手なわけがないと納得しました」。

気がつけば、ウェブサイト立ち上げから15年。ルークトゥンを通してタイ人の暮らしを知り、タイとの距離が縮まったと吉田さん。「暮らしの生々しさが歌詞に投影された、生活に密着した言葉は本当に奥深い。知れば知るほど発見があり、終わりがないんですよ。地方で暮らすタイ人にとって、ルークトゥンは“生きるための歌”であり、歌い手は成功の証。みんな成功を夢見てバンコクに出て来ています。一人ひとりにさまざまな物語があるからこそ、応援したくなるんです」。

まだまだ紐解かれていない、日本人が知らない“タイの音”がある―――。
吉田さんはそれを掘り起こし、伝え続けていきたいと言います。「100の言葉を連ねても、1回のライブには敵わない。ぜひ、その音を生で体感してください」。


PROFILE
そむちゃい吉田
Somchay Yoshida
1963年生まれ、東京都出身。92年、初めてタイを訪れ、99年に移住。2003年、ルークトゥン情報サイト「ルークトゥン・タイランド!」を開設し、アーティストやイベント等を日本語で発信している(ブログ、Facebook、YouTube)。 現在、日系企業のタイ進出を支援する「Ts Planning」でライター・通訳・PRを担当。好きな言葉は「マイペンライ」。リフレッシュ方法は、一人の時間。タイの心地良さが好き。


Ts Planning Co., Ltd.
「日本とタイの相互理解を深め、
共に未来へ繋げていきたい」
タイのTV旅番組「TADAIMA」制作協力や企業自治体のタイ進出をサポート。日本アンテナショップ「1887」等でのイベントを通して、歌手たちにステージ機会も提供。日本とタイを相互に繋いでいる。
Email:info@ts-planning.tv
Website:www.ts-planning.tv
Facebook:Ts Planning Co.,Ltd.


編集部より
初めて聴いたのにどこか懐かしい。そんな素朴なメロディと楽器音が印象的なルークトゥン。毎月第1日曜12時〜18時、ビクトリーモニュメント駅すぐそばでライブが行われてるとのこと。皆さんもぜひ(山形)

取材・文 山形 美郷


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