“人材紹介”を通して伝える タイと日本のいい付き合い方

若くしてバンコクで人材紹介会社「パーソネルコンサルタント」を起業し、今年で25周年。人脈と顔の広さはバンコク随一。タイでの時間と出逢いを、自らの肥やしにしてきた小田原靖さんが考える恩返しとは。

郷に入れば、郷に従う―――。その言葉の意味は理解できても、染み付いた母国のやり方を変えるのは難しいもの。小田原さんがタイへの移住を決めた1993年当時は、まだ日系企業の進出も今ほど多くなかった時代。日本から赴任したばかりの駐在員が、人材採用の方法が分からず右往左往している状況を知り、自ら起業を決意したのだそう。「大学時代をアメリカで過ごし、海外で起業したいとずっと考えていました。いざ、どこで始めようかと模索していた時にバンコクを訪れ、今後の成長を予見させる熱気に触発されて移住を決めました」。

偶然訪れたタイの地で、1994年に「パーソネルコンサルタント(以下パーソネル)」を設立。人材を求める企業に足を運び、顔を合わせた“人と人”との付き合いを深めていきます。大事なのは、信頼関係とコミュニケーション。それは、社内のタイ人スタッフとの関わりも同様。固定概念を捨て、目の前の社員一人ひとりの話を聞き、適材適所の役割を与えること。小田原さんはタイに身を置く中で、ビジネスの良し悪しは現地スタッフとの関係性に直結すると感じるように。「タイ人の考えを理解し、良好な関係を築くことが、仕事の充実度と会社の成長に繋がる。その培った経験則を、タイで働く日本人の皆さんに還元していきたい」。

ガムシャラに走り続けて10年ほど経った頃、小田原さんの胸には“恩返し”の気持ちが芽生えていました。

オフィスを構える「インターチェンジビル」内のイベントスペースは、タイに住む日本人の交流の場に

25年の経験を多くの人に役立てたい
その一つとして2009年、海外を拠点に活躍する日本人起業家のネットワーク「WAOJE(ワオージェ)」バンコク支部を谷田貝良成氏とスタート。ビジネスにおける情報の少なさを解消するべく、情報交換と学びの場を提供していきます。

同時に、アソークのオフィスビル内にイベントスペースを開設。写真展や絵画展、書道展、日本人会のサークル活動など、タイに住む日本人の発信の場、交流の場を生み出してきました。「企業と求職者はもとより、趣味や個人の活動を通して一般の方々が繋がるきっかけになれ幸いです。そこからビジネスに発展することもありますし、新たなアイディアを頂くこともあります」と小田原さん。また、「バンコクスリウォンロータリークラブ」に参加し、生活環境が整っていないタイの地方の小学校に寄付を行う活動も実施。現地へ赴き、リサイクル自転車や本、浄水器を届けるなど、長期的な支援を行っているのだそう。

そうして感謝の気持ちを具現化するものの、小田原さんにとってはまだ不十分。「もっと力になりたい」という想いは尽きません。そして今年、タイ国外へ向けた人材紹介が可能となるライセンスを取得。今後は、日本で働きたいタイの人たちを日本企業へ紹介していきたいのだと言葉に力を込めます。「日本でも人材不足問題が取り上げられていますが、タイ国内と並行し、お互いの希望を叶えられる環境を提供していきたい」。

小田原さんにとって、人材紹介は仕事を超えた人との繋がり。20年以上も前に人材を紹介した企業から、未だに感謝の言葉をもらうこともあるのだそう。「紹介先で勤続し、社長に就任したなど、その後の成長まで感じられるのはとても嬉しいこと。だからこそ、もっと自分に出来ることはないか、探したくなるんです」。タイへの恩返しは、これからも続きます。


PROFILE
小田原 靖
Yasushi Odahara

1969年生まれ、福岡県出身。93年来タイ。翌年、在タイ日系企業向け人材紹介会社「パーソネルコンサルタントマンパワータイランド」を設立。2012年にレンタルオフィス事業をスタートし、19年に国外向け人材紹介ライセンスを取得。リフレッシュ方法は、プロンポンにある「At ease」の酵素風呂と日本人会のバスケットボール。


パーソネルコンサルタントマンパワータイランド
今年で創業25周年
日本への人材紹介業を始めます

在タイ日系人材紹介会社で初めて、タイ国外への人材紹介ライセンスを取得。合法的に高度人材を日本の企業に紹介することができる唯一の会社です。タイだけでなく、日本で働く優秀なタイ人もご紹介致します。
[問い合わせ]
Email:shigoto@personnelconsultant.co.th


編集部より
見識を広げるために勉強会を自ら開催している小田原さん。「社長の器が会社の器。私が立ち止まったら、会社の成長はあり得ませんから」。自分を律し、周囲を引き上げる信念に触れた気がしました


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