海外に住んでいるとどうしても日本の暮らしと比べてしまうことがある。特に「引越し」に関していえば、日本の引越しサービスは世界NO1のクオリティと言ってもいいだろう。
現在、約6万人の日本人が暮らすバンコクで展開しているタイ国内引越しサービス「クラウドムービング」。
日本人が窓口となって対応し、予算から見積もり、そして梱包の注意などを日本語で正確にオーダーできることから、在タイ日本人から大きな支持を集めている。
この画期的な「タイ国内引越し」サービスをスタートさせたのが、CLOUD BUTLER MDの織戸直彦さんだ。
織戸さんは1989年、神奈川県川崎市の生まれ。
そんな彼が最初にタイを訪れたのは2016年。ヘリコプター会社を買収した日本人経営者のもと、ヘリコプター送迎業の立ち上げスタッフとして来タイ。営業スタッフとしてバックオフィス業務や商品開発などを担当。順調に事業が進んでいったが、転機が訪れる。
3年間勤めてきた会社が撤退することになるのだが、織戸さんは日本へ戻らずに、タイに残ることを決意。
「日本で自営業をした経験があったので、思い切ってタイで独立してみようと思いました」。
そして2019年11月、タイを訪れる日本人旅行者向けの車送迎とカーリース事業を手掛ける「CLOUD BUTLER」をバンコクに設立した。
会社設立から4カ月、観光のハイシーズンも重なり予約が次々と舞い込み、多忙な日々を過ごしていた。順調に売上を伸ばしていき、これからだというときに「新型コロナウイルス」による大打撃を受ける。
2020年3月、タイ政府が外国人の入国禁止措置を開始したことで入っていた予約は全キャンセル、営業停止を余儀なくされ、売上はゼロに。仕事がストップしている間にもコロナ関連の事業(フェイスシールドや検温器の輸入販売等)を試みたりしながら悶々とする日々を過ごしていた。
そんなある日、日本に一時帰国する知人の荷物をバンで保管倉庫まで運ぶ手伝いをしたという。
織戸さんは今でも当時のことを鮮明に覚えているといい、知人から予想以上に感謝されたことで「もしかしたら、これはビジネスになるかも」と一筋の希望がみえたそう。
というのも、タイには国内引越しを専門とした業者がほとんどなく、日系運輸大手は海外引越しがメイン。国内引越しならば勝算があると見込んだ織戸さんは、2020年6月に「クラウドムービング」を開始した。
サービスを始めた1カ月目の引越し件数はわずか2件(売上は4,500B)。それでも「引越しの問い合わせをもらえることが本当にありがたかったです」と話す。
それから広告や口コミでの評判が広がり、受注件数も急増。多い時で1日14〜18件ほどの依頼があり、繁忙期は1カ月で160件(今年3月に発生したミャンマー地震の後にあった依頼件数だという)。これまでに手掛けた件数は5000件に上る。
同社は「日本式」のサービスを大きな強みとしているため、スタッフの教育・指導を徹底。織戸さん自身も引越し事業に携わるのは初めてだったため、自身とスタッフはYou Tube動画を見て日本式の引越し作業を覚えていった。
また、スタッフの大半がタイ人であることから「スタッフとのコミュニケーションを大切にしている」と話す。
今から1年ほど前、予想を上回る忙しさにキャパオーバーしてしまい、スタッフに対して厳しくあたってしまったという。その結果、創業当時から働いていたタイ人・日本人スタッフが辞めてしまった。
「その頃が一番しんどかったですね」と当時を振り返る。
現在、顧客の9割以上が日本人。“日本式”を武器にした引越しサービスは好評で、なかには7回リピートした方もいるのだとか。
「お客様の喜ぶ顔や『ありがとう』という言葉が何よりも嬉しく、励みになります」。
今年の11月で設立6周年を迎える「クラウドムービング」。
今後も日本人に向けてサービスを提供していくのはもちろん、他国の人にもサービスを打ち出していきたいと考えているという。
今までもこれからも「丁寧」と「安心」の“日本クオリティー”でタイの国内引越しを支えていく。





