【亜州ビジネス編集部】
米商務省は21日、タイやベトナムなど東南アジア4カ国の太陽光パネルに対する反ダンピング(AD)および相殺関税(CVD)の調査で、いずれも最終的な制裁を科す決定を下したと発表した。中国政府からの補助金を受けたサプライチェーン(供給網)を通じて製造を行い、米国への輸出価格を不当に安価に設定したことで、米産業が損害を受けていると判断。1年超にわたる調査を経て最終的な結論を出した。
対象はタイとベトナム、マレーシア、カンボジアの4カ国から輸入される太陽光パネルと太陽電池(セル)。現地で実際に組み立てられているかどうかは問わず、通関時にAD・CVD税の両方を課すとした。税率は企業によって異なり、AD税率はベトナムが58.07~271.28%とレンジ上限が最も高く、タイが111.45~202.90%、カンボジアが一律125.37%、マレーシアが0.00~81.24%としている。
CVD税については、いずれも中国政府による補助金が影響していると認定。商務省が「越境補助金」として課税判断を下す異例の事態となった。税率はカンボジアが534.67~3403.96%と突出して高く、マレーシアは14.64~168.80%、タイは263.74~799.55%、ベトナムは68.15~542.64%とした。
今後は独立機関である米国際貿易委員会(ITC)が6月2日までに、各国の製品が米産業に実際に損害を与えているかどうかを判断する。肯定的な結論が出た場合、AD・CVDの正式な課税命令が発動される見通しで、否定された場合は今回の措置は無効となる。
米国の2023年の太陽光パネル輸入に占めるタイなど4カ国製の割合は7割を超えていた。制裁を回避したい中国メーカーによる投資が14年ごろから拡大し、米国への輸出を加速させていた。22年5月から2年間は米政府がこれら4カ国製の太陽光発電関連製品に対して関税を免除したことで、輸出増に拍車がかかった。