【タイ】中銀が2会合連続で利下げ、成長予測を下方修正

【亜州ビジネス編集部】

タイ中央銀行は4月30日の金融政策決定会合で、政策金利(翌日物レポ金利)を0.25ポイント引き下げ、1.75%とすることを決定した。利下げは2会合連続で、金利は2年ぶりの低水準となる。米国の関税政策の影響で輸出や観光への不透明感が強まっており、中銀は2025年の国内総生産(GDP)成長率見通しを従来の2.5%超から2.0%へと下方修正。最悪の場合は1.3%にとどまる可能性もあるとして、景気の下支えに動いた。

会合では委員7人中5人が利下げを支持。2人は据え置きを主張したが、タイ経済の下振れリスクを重視する意見が多数を占めた。

中銀は声明で、米国の貿易政策とそれに対する主要国の報復措置が世界経済や貿易構造に大きな変化をもたらすと指摘。米政府が4月初めに設定し、90日間の猶予期間が与えられた高関税措置が変更されずに発動された場合、タイ経済の成長率は約2.0%にとどまり、報復関税などで事態がさらに悪化した場合には1.3%まで落ち込む可能性があるとした。

中銀は、成長をけん引してきた観光業にも陰りがみられるとし、25年の外国人観光客数見通しを従来の3950万人から3750万人へと下方修正。輸出伸び率の見通しも2.7%から0.8%に引き下げた。

インフレについては、原油価格の下落や政府の補助金政策により、25年は低水準にとどまると予想。25年のインフレ率予想を従来の1.1%から0.5%に引き下げており、中銀目標(1.0~3.0%)を下回るとみている。

ロイター通信などによると、中銀のサカポップ総裁補佐は会見で、リセッション(景気後退)の可能性に言及した上で、「政策スタンスは金融緩和方向へ切り替わった」と述べた。

一方、政府による経済対策や米国との通商交渉の行方が今後の成長を左右する構図は続く。政府は米国に対して、原産地証明の適正化や為替操作の懸念解消に向けた対応を進めており、関税撤廃に向けた協議の再開を模索している。

サイアム商業銀行(SCB)傘下の調査機関であるエコノミック・インテリジェンス・センター(EIC)は、中銀が年内に追加利下げし、1.25%まで金利を引き下げると予想。CIMBタイ銀行(CIMBT)の調査部門も、景気がさらに悪化すれば金利が年末までに1.0%まで下がる可能性があるとしている。


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