KDDI(タイランド)

モバイルソリューションを提供する上でのノウハウがある

マネージングダイレクター

田島 努

《プロフィール》 ■1965年生まれ。奈良県奈良市出身。88年神戸大学卒業。2014年4月KDDIタイランドMD就任。現在に至る。
 

将来有望なタイ。 人員増、盤石な組織構築が至上命題

—タイ進出歴は長いと聞きました
現地法人の設立は1999年3月です。ただ、弊社は2000年にKDD(旧国際電信電話)、DDI(第二電電)、IDO(日本移動通信)の3社が合併して誕生しました。すでに旧国際電信電話が、1970年代に駐在員事務所を構え、タイに進出する日系企業をサポートしていたので、それも含めると約40年の歴史があることになるでしょう。また、タイでの主な事業領域は、通信サービス、データセンター、システムインテグレショーンの3本柱です。通信・データセンターは、日本でも強みとしている事業で、タイでもライセンスを取得し、展開しています。ほかにも、企業のオフィス内のITインフラ、工場間のネットワークなどを総合的にサポートしています。



—auのイメージが強いですよね
日本では携帯電話キャリアの「au」色が強く、コンシューマー向け企業のイメージを抱かれていると思います。実際、日本国内では売上の75%携帯関連サービスですから。ただ、ご存知の通り、日本国内市場は少子高齢化により、大きな伸びは期待できません。全社的にはグローバル展開に力を注ぎ、まずは企業向けITサービスが主軸となっています。



—タイ市場の状況は?
大手日系企業の進出は、ほぼ完了し、現在は中小企業を中心の進出が続いていますので、提供するサービスの規模は小さくなりましたが、タイのローカル企業の事業高度化も進み、魅力的な市場であることは確かです。また、日本と比べてタイの市場は、求めるサービスに違いもあります。


タイでは、パソコンよりもスマートフォンやタブレットといったモバイル端末の普及が進みました。結果、ビジネスにおいても、クラウドを活用したモバイルソリューションをビジネスに導入する企業が増えています。現状、タイの通信インフラは3Gで、若干心もとないですが、近い将来4Gとなれば、こうした動きは、ますます加速するでしょう。すでに我々も、Web会議サービス提供で有名な「V—CUBE社」と組んで、スマホやタブレットによるWeb会議サービスを開始しています。



—モバイルを生かしたサービスは得意というわけですね
仰るとおりです。「au」=モバイルでの実績が最大の強みでしょう。iPhoneやiPadも取り扱い、モバイルソリューションを提供する上でかなりのノウハウがあると自負しています。なにより、弊社は通信インフラづくりにも長けていますし、土台(インフラ)と上モノ(モバイルソリューション)を兼ね備えるている点では、他社には引けを取りません。



—KDDIグループの中でタイの位置付けは?
AEC(ASEAN経済共同体)の発足で、域内中心国になるであろうタイは、前述したとおり、魅力的な市場であることは変わりません。東南アジアでの拠点はシンガポールとタイをはじめ10ヵ国ですが、メコン経済圏を視野に入れた場合は、タイが中心となり、グループ内でも重要拠点と位置付けられています。



—日本人スタッフが多い印象を受けました
現在、タイ現地法人のスタッフ中、日本人が12人、日本語を話せるタイ人が15人います。これは、弊社の顧客の多くが日系企業であるためで、日本語対応のできる陣容を整え「タイでもジャパニーズクオリティー」を目指しています。



—タイ赴任1年を振り返り、いかがでしょうか
2014年4月に赴任した当初は、デモが続き、タイに来て1ヵ月後にはクーデターでした。正直、前途多難だなと感じましたね。ところが、業績に関しては、予想以上の影響はなく、あっという間に通常な状態に戻ったのには驚きました。



—海外赴任はどうですか
これまで、インドネシア4年、オーストラリア3年、シンガポール3年と3ヵ国を経てタイです。海外については家族も含め慣れています。個人的には、独身時代に赴任したインドネシアが印象的でしたね。当時の治安は今よりも悪く、自身も20代と若かったのでエキサイティングな経験だったと感じています。



—今後の展望を聞かせてください
タイ経済は鈍化していると言われていますが、総体的に伸びている市場であることは確かで、将来的には有望です。人員的にも増やし、対応できる強い体制=組織を整えていることが私の至上命題です。


 

編集後記

「ジャパニーズクオリティーが強み」と言う田島氏。多くの日系企業が目指す現地化とは真逆の回答だ。「日系企業がメインなので日本語で対応するのが一番」。理にかなった答えだ。経営方針に「お客様の期待を超える感動を」を掲げている。異国の地でありながら、“いつでも日本語が通じる”は、まさに期待を超えるサービスだろう。日本では、過去最高益という第1四半期決算を発表(2015年8月)した。盤石な基盤のもと注力する海外展開。タイ市場での飛躍はこれからだ。(北川 宏)

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