毎年4月になると行われるタイの徴兵検査。例年ソンクランの前頃に実施されることから“暑季の風物詩”としても知られる。高校・大学時代に軍事訓練を受けていないタイ国籍の男性は、21歳になる年の4月に受験する義務がある。
徴兵検査の対象者はもちろん男性だが、トランスジェンダーやニューハーフの人も戸籍上は男性なので兵役の対象。身体検査を受験して身体と精神に問題がないかを確認し、合否が判断される。その身体検査には“美女”も含まれているのだが、ジェンダーの性別不合を理由に兵役免除となることが多いという。
この身体検査に合格すると待ち受けているのが「くじ引き」だ。くじには黒と赤のカードがあり、黒を引けば兵役免除、赤を引くと兵役が決定する。「赤か黒か」、これが人生の大きな分かれ道となり、毎年数多くのドラマが生まれている。
とある会場では最終候補者10人に対し、残った10枚のくじのうち1枚だけ「赤」があるという、さながらロシアンルーレットのような展開に。一人、また一人と「黒」のくじが引かれていき、赤は自分が引くかもしれないという恐怖心は容易に想像できる。
結局、最後に引いた9人目の男性が兵役行きの切符を手にすることになったのだが、そもそもくじ引きで人生が決まってしまうのだからたまったもんじゃない。
国防省によると将来的には徴兵の人数を減らし、志願兵のみにしていくという方針を打ち出しているそう。くじ引きによる若者の人生劇場が見られなくなる日もそう遠くないのかもしれない。




