10月24日夜、タイ王室事務局は「シリキット王太后陛下がチュラーロンコーン病院で崩御した」と発表した。享年93歳。王太后は2019年から同病院で療養生活を送っており、闘病に専念していた。しかし、10月17日頃から敗血症の症状が見つかり、医師団による懸命な治療が続けられていたが、24日夜に安らかに息を引き取ったという。
崩御の知らせを発表後、タイ国民に深い悲しみをもたらしている。
「国民の母」として敬愛されてきたシリキット王太后は1932年8月12日、バンコク生まれ。1950年4月28日にプミポン前国王(ラマ9世)と結婚し、同年5月5日の国王陛下の戴冠式で王妃の称号を授かる。以降、国王とともに全国の地方や集落に赴いては、国民に寄り添い、文化振興や地方支援に尽力。
特にタイ民族衣装の体系化とシルク産業の発展に大きく貢献し、フランスのデザイナー、ピエール・バルマンと協力してタイシルクを世界に広め、タイ職人の需要を高めた。また、伝統仮面劇「コーン」の保存活動を推進し、ユネスコ無形文化遺産への登録に繋げるなど、タイという国そのもののアイデンティティ作りの第一人者として尽力してきた人物だ。
さらに1976年には王太后(当時は王妃)の誕生日である8月12日が「母の日」に制定されるなど、長きにわたりタイ国民の“母”として深く愛されてきた。
現在、王太后のご遺体は王宮内に安置されており、1年間の喪の後に火葬が行われる予定だという。これからもタイ国民の心の中には、“タイの母”として永遠に生き続けていくだろう。




