不景気のしわ寄せが子どもに

大学卒業までの子育て費用はひとり総額137万バーツ
経済的に苦しい家庭は制服の新調を諦める傾向が続く

 

そろそろタイの学校では新学期が始まる。日本同様、子どもの入学や進学準備のために各家庭の親たちが奔走する時期だが、最近はどうやら事情が異なるようだ。
タイ商工会議所の経済・ビジネス予測センターによると、新学期の準備に関わる経済規模は昨年と同様に約4000〜5000億バーツと見ているが、不景気の影響で一般家庭の財布の紐は固くなり、新学期のために新調する制服の売れ行きは不調。クレジットカードや消費者金融からお金を借りて、資金を工面している親が増えているという問題もあるが、それでも市場は縮小傾向にある。学生制服を扱うノームジット・マニュファクチャリング社のアーノン社長は、経済的に苦しい家庭は新学期の準備に対するコスト削減が顕著だと指摘。「幼稚園から大学まで制服を着るタイでは、これまで子ども1人に対して毎年平均3〜5着の制服を購入するのが通例だったが、近年は1〜2着しか買わなくなった。例えば、中学生では毎年制服を新調することが少なくなり、3年間同じ制服を着続けられるように実寸よりも5〜10%大きなサイズを購入している」という。さらに都会と地方でも格差があり、子どもに新しい制服を買う親の割合はバンコクでは30〜40%程度だが、地方では10〜20%程度まで下がる。同社長は「地方における制服市場は深刻な状況で、親の購買意欲が2年前から停滞している」と懸念している。
投稿サイト「パンティップ」に掲載されたタイファイナンシャル・プランナーズ協会のデータによると、タイで子どもが生まれてから大学卒業まで教育にかかる費用は137万4400バーツ。すべて公立校だとしても、学費だけで約21万2000バーツかかると算出している。タイ統計局における2015年の調査によると、世帯当たりの平均収入は月2万6915バーツ。支出の内訳をみると教育分野は1.7%で、一見低いように感じるが子どもを大学卒業まで育てるためには給料の約4年分が必要となる計算だ。
不景気や物価高騰は国民の生活を圧迫しているが、教育コストを節約するという形で、子どもにも影響を与えている。

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