「はじめに」 – 知財・模倣対策の プロ講座!第1回

加藤 範久 - 日本貿易振興機構(JETRO)バンコク事務所 知的財産部長

日本貿易振興機構(JETRO)

バンコク事務所 知的財産部長 加藤 範久 Kato Norihisa

2003年特許庁入庁。特許審査官として、土木、アミューズメント分野の特許出願の審査に従事。2017年10月より現職。

  Aさん「これ◯◯ブランドだけど、市場でこんなに安く買えた」、Bさん「それ絶対偽物だよ」。

こんな会話をよく聞きませんか?タイは2006年以降、11年連続で米国通商代表部(USTR)から「スペシャル301条報告書」の「優先監視国」に指定され、知的財産の保護環境の整備を求められています。

その後、タイ政府の努力もあり、一定程度、状況が改善されたことから、2017年に「優先監視国」から1つ軽度の「監視国」に変更されました。  

それでも、なくならない“偽物”

一方、タイを含むメコン地域では主要幹線道路を経済回廊として整備を進めてきた結果、陸路でのタイへの輸入貿易額は近年、増加しており、そのことからも、陸路での模倣品の流入が増加しているようです。

一例として、タイ商務省によると、カンボジアからタイへの輸入貿易額は、12年の74億バーツから、16年には356億バーツと約5倍に増加。

またタイ税関によると、カンボジア・タイ間の主要な国境であるアランヤプラテートでの模倣品の取締り件数は、12年の19件から、16年には150件と急増しています。  

 

偽物が出回ると何が問題なの?

安い偽物が出回ると本物の売り上げを侵害します。

すると企業経営に支障をきたし、優良企業が次なる新製品・商品を開発できず、経済が停滞してしまいます。

また偽物を製造する多くがマフィアといった反社会勢力だと言われています。

そうした組織の資金源にも繋がり、組織の活動が活発化することで、国家運営にも支障をきたします。

ただ、多くの人がこうした事実や本物を守る「知的財産」について詳しく知らないのが実情です。

以前、タイで人気アイドルグループのメンバーが、自身のSNSでアップした写真の中に写り込んだバッグや靴などが偽ブランドだったことで批判が殺到。

1カ月間の活動休止にまで追い込まれました。

さらに、オフィスで使用していたソフトウェアが正規のライセンスを受けていない偽物で、取り締まりを受けペナルティを与えられる企業もあります。

偽物と知っていたか否かに関わらず、著名人や企業のブランドイメージを低下させるだけでなく社会的な信頼を失う結果になります。

正しい知的財産の知識があれば、こうした問題を回避できることにも繋がります。

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