米特恵関税の一部停止

対象は電機部品や水産物など573品、13億ドル分

タイの輸出産業に逆風が吹いている。

世界的な通貨安に伴うバーツ高に続き、10月25日には米国の通商代表部(USTR)から特恵関税制度(GSP)の一部停止措置を宣告された。

対象は電機部品や水産物など573品。

これらの輸出額は対米輸出総額の3分の1に当たる約13億ドル(約39億バーツ)に上る。

この措置は2020年4月25日から適用される。

GSPは発展途上国の成長支援を目的に、対象国からの輸入関税を一部免除する制度。

タイと米国の間で1976年から実施されている。

タイの地元メディアによると、米国は今回の措置について「タイ政府が労働者の権利を十分に保護していない」と理由を説明するが、タイの識者は「米国の対タイ貿易赤字が膨れ上がっているためでは」「米国で使われる農薬3種の使用をタイ政府が全面的に禁止したことに対する報復だ」との見解を示す。

事実、2018年の対米貿易は大幅な黒字だった。

輸出額が319億ドルだったのに対し、輸入額は126億ドル。

輸出額単体で見ると、米国は中国に次ぐ第2位の大口顧客となる。

そんな中、米国はタイに対し1485もの品目をGSP対象としてリストアップし、うち355品は実際に輸出された。

今年も1〜8月の間で32億ドル分の品がGSPの恩恵を受けている。

一方、タイ商務省は今回の措置について「影響は非常に小さい」と余裕を見せる。

GSPの一部停止により米国向け輸出品の関税は4.5%引き上げられ、年間15〜18億バーツほど増える見通しだが、来年の対米輸出額は2,880万〜3,280万ドル減に留まると予想。

これは総額の0.01%に過ぎないと説明する。

さらに同省は28日、さまざまな対策を実施すると発表。

関税優遇が停止する来年4月までの輸出量を増やしたり、ASEANや欧州などの新規市場の開拓を進めたりするなどの戦略を明らかにした。

また、プラユット首相は11月初旬に行われるASEAN首脳会議で来タイする米政府代表と今回の措置を取り下げるよう協議する予定だ。

政府は強気な姿勢を見せつつも、迅速に対策を練っている。

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