安全? 疑問符だらけの給食牛乳

児童の栄養失調改善目的に生まれた「給食牛乳」
しかしその品質や安全性は標準以下と判明

 

学校で配布される給食牛乳で、食中毒が頻発。その品質や衛生管理が問題となっている。
タイでは、就学児童の栄養失調の防止と国内の牛乳生産援助を目的に、1992年から政府が進める「ノムロンリアン(給食牛乳)」プロジェクトにより、幼稚園〜小学6年までの児童に無料で牛乳を配布している。
配布する牛乳は、パック式の「超高温瞬間殺菌(UHT)」と袋式の「低温殺菌牛乳(LTLT)の2種。原料の生乳には、全固形分率(TS値)12・15%以上、乳牛の体細胞(SCC値)は1ccに対して65万セルを超えてはいけないなど、ミルクボード(ノムロンリアンプロジェクト担当委員会)が定めた基準をクリアしているものだけを使用している。
厳しく管理しているはずのノムロンリアンだが、毎年、食中毒になる生徒が後を絶たない。今月3日にはタイ東北コンケーン県にある小学校で、ノムロンリアンを飲んだ生徒382人中、99人が腹痛・下痢の症状を訴えたほか、ナコーンラーチャシーマー県の小学校でも、48人の生徒に同様の症状が見られた。
保健省のソーポン氏は、調査の結果、輸送時の温度管理と積載方法に問題があり、牛乳が腐っていたためと説明。「保健省職員が1ヵ月に一度、ランダムで生産工場での品質検査を行うこと」「学校職員の協力の下、牛乳の色、におい、味のテストを行い、異状があれば配布を中止する」と、今後の品質管理を徹底するとした。
また、ネイション22チャンネルのタイニュース番組「プライムタイム」がアサンプション大学にUHTの品質検査を依頼したところ、基準を満たしてないことが発覚。しかも、タイでは無料配布のノムロンリアンが、カンボジアのコンビニで1個17〜18バーツで販売されている画像がフェイスブックに投稿され、「政府が横流ししているのではないか」と疑問の声が挙がった。
結局、カンボジアで売られていたノムロンリアンは、民間業者によるものだった。相次ぐ不祥事に、同プロジェクトに対する疑問が噴出。児童の親からは、「1年に1400億バーツもの予算をつぎ込む必要があるのか」とプロジェクト見直しが求められているという。

この記事をSNSでシェア!

一番上へ戻る