【謹賀新年】読みたくなる2024年へ
週刊ワイズ編集長
吉田一紀

バンコクでは現在、およそ10紙の日本語フリーペーパーが発行されています。何気ない数字かもしれませんが、じつはこれ、とても凄いことだと言えるのです。ちなみに日本外務省の2023年の統計では、世界の都市の中で日本人が最も多く住んでいるのが米国のロサンゼルスで、その数は6万1157人。第2位がタイのバンコクで5万1407人となっています。

では、在留邦人数第一位のロサンゼルスで発行されている日本語フリーペーパーが何紙かというと、それは3紙ほど。なんと在留邦人数第2位のバンコクの方が4倍ほど多くのフリーペーパーが存在しているのです。インターネットを介したオンラインメディアが隆盛の昨今、バンコクでは依然紙のメディアが大健闘していると言えるでしょう。

そんな紙のメディアで育ってきた僕にとって、やはり印刷物にはひとしお強い思い入れがあります。例えば、買ってきたばかりの雑誌を開いたときの印刷物特有の匂い。そこからはインクと紙が混ざった独特の匂いがあります。インクや紙には国による匂いの違いもあって、米国から輸入された書籍やレコードジャケットからは“アメリカの匂い”がしたものです。味覚こそは該当しませんが、このように視覚、嗅覚、触覚、聴覚(紙をめくるときの音)をフルに使って接することができるのが紙のメディア。こんなふうに、ほぼ五感を使って「読む」楽しみを得られるのがフリーペーパーなのです。

週刊ワイズもコロナ禍を機にオンラインへ本格的に力を注ぎ始め、順調にオーディエンスを増やし続けています。ただ、“紙”である週刊ワイズも休むことなく毎週発行し続け、昨年12月には創刊以来900号を突破しました。これに理由があるとするなら、やはりバンコクにはいい読者がいる、ということでしょう。もちろん弊紙では日頃から、楽しさ、面白さ、柔らかさ、そしていい文章について考え、工夫を重ねています。それでもやはり、発行し続けられるのは「読む」ことで支えてくれる人がいるからです。

どういうのがいい紙面であり、いい文章であるかは、書き手のそれぞれが考えることであり、そして「読む」人が決定すること。だけど、読んでもらえる内容でなくてはならないということが基本中の基本。情報や言葉は時代とともに変わるけれど、常にきちんとした質を維持することが必要です。今のこの世の中、ニュースはインターネット網を電光石火のコミュニケーションのごとく流れます。2024年、それでもタイ・バンコクに暮らす日本人の皆様が読みたくなるような紙面をお届けするのが週刊ワイズ。本年もよろしくお願いいたします。

週刊ワイズ編集長 吉田一紀

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