エルニーニョ現象の猛威

ダム貯水率が危機的数値、経済損失は150億バーツ超か

タイ経済に暗い陰を落とすのは、米中貿易戦争のみにあらず。日本やタイを含む各国ではエルニーニョ現象による波状攻撃が続き、その対策が急務とされている。
タイ水産農業資源情報研究所のスタット所長は7月20日、エルニーニョ現象の影響により今年は年間を通じて全国的に降水量が減少するとの予測を発表。実際に、今年1月から現在までの総雨量は前年同期比の30〜40%減。全国77県のうち、コンケーンなど東北地方の10県と、ラムパーンやラムプーンといった北部の6県、さらに南部・西部地域4県を合わせた20県で、大規模な干ばつが発生するだろうとの見解を示している。

また今は雨季であるにも関わらず、全国35カ所のダムのうち、国内最長のパーサック・チョンラシットダムを筆頭に、半数のダムで貯水率が30%を割っている。とりわけ、チャオプラヤー川上流にある同ダムやプミポン、シリキット、クェーノイの4ダムでは現状だと40日ほどで渇水するというから、事態は深刻だ。
水資源不足による影響としてまず挙げられるのが、食料枯渇と農業経済へのダメージだ。昨年の米の生産量が世界第2位を誇る稲作大国でありながら、すでに前述のチャオプラヤー川周辺地域では前年比26%、全国的には50%も収穫量が減少。さらに、国内最大の稲作地域である東北部スリン県のトゥン・クラー・ローンハイ地帯では、200万ライ(約3200km2)以上の稲田で干ばつによるイネ枯れが発生し、次回8月の田植えには間に合わないだろうと推測されている。

政府は7月下旬より一部地域で集中的な人工降雨を行うなどしているが、持続可能な解決策にはならないと各方面から非難が寄せられている。さらに、昨年11月には国連が「来年は東南アジア各地で、干ばつが発生するだろう」と警告していたにも関わらず、対応の遅さを指摘する声も少なくない。
タイ国内総生産(GDP)の約8%を占める農業分野。農業国の底力で巻き返しを図れるか否か、これから新政府の手腕が試される。

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