国民一人に1,000バーツ

予算190億円を投じた景気刺激策の行く末は

干ばつによる「農家救済策」、8〜9月の2カ月限定で支援金の給付規模を拡大した「福祉カード」。

これらと共に今年8月、新政府が景気回復に向けた突破口として打ち立てた第3の国民支援策がいよいよ始まった。

「シム・ショップ・シャイ」と銘打ったこの政策は、タイ国内における個人消費と旅行業の押し上げを目的に、政府が国民一人当たりに1,000バーツを給付するというもの。

受給資格は18歳以上のタイ国籍保持者で、政府が発行したアプリケーション「PAOTUNG」に個人情報を登録する必要がある。

190億円の予算を投じた今回の支援策では、同アプリを経由した上で、住民票登録地以外にある加盟店での買い物が給付条件。

また、1,000バーツ以上の買い物では、最大4,500バーツまでの超過分が給付される。

登録期間は9月23日から11月15日まで。

1日の登録者数は100万人までとされ、政府は登録者数が1000万人に達した時点で終了するとしている。

9月23日の午前零時1分からアプリの登録が始まり、地元メディアによると初日は約8時間で100万人に到達。

以後、わずか3時間で打ち切られる日もあったという。

また、開始から10日後の10月2日の時点ですでに1000万人に達したものの、入力不備などで除外された2割分の受付が現在も行われている。

財政経済事務局の調べでは、すでに約70万人がアプリを通じて買い物をし、現時点の給付総額は6億2,800万バーツになる。

地域別にはバンコク都で8,700万バーツ、次いでチョンブリー県、サムットプラカーン県と、バンコク近郊での使用が目立った。

また、政府推進のOTOP(一村一品運動)取り扱い店やブルーフラッグ店舗の利用が半数を占め、0.2〜0.3%のGDPの上昇が見込まれている。

一方で、野党からは「本当に救済が必要な貧困層はアプリなんて使えない」「加盟店は大手ばかりで中小企業には利益が還元されない」といった批判の声も。

政府としては電子商取引の促進にも繋げたい考えだが、真の救済策とは言い難いのが現状のようである。

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