石炭火力発電所に“待った”

プラユット暫定首相が見直し指示も、「なぜ石炭?」と疑問符

 

発電所建設をめぐって、政府と建設反対を訴える地元住民が対立。プラユット暫定首相は、計画承認をいったん白紙に戻す異例の事態となっている。
発端は、17日に開かれた国家エネルギー政策委員会(委員長・プラユット暫定首相)で、南部クラビー県の石炭火力発電所の建設計画を承認。それを受けた、地元住民らが強く反発。首相府前に集まり抗議集会を開いた。これを受けて首相府のサンセーン広報官は「エネ政策委は、計画に反対する地元住民らの疑問を解決するため、環境影響評価(EIA)と環境健康影響評価(EHIA)の手続きを見直す」と発表。実質、計画は白紙に戻された。
だが、同省によれば、タイ南部の電力不足は逼迫しているため、発電所の早期着工が望まれるという。現在、南部の電力需要は最大3089・5MWだが、タイ国発電公社(EGAT)は、既存の発電施設では、最大2713MWの発電量しか確保できず、不足分はタイ中部からの電力融通またはマレーシアから購入して対応している。しかも、南部の電力需要は年4・7%とタイ最大の増え幅で、特にアンダマン海沿い(パンガー県、プーケット県、クラビー県、トラン県)の需要が多く、必要電力800MWに対し、エリア内の発電量は315MWと心もとない。そこで、同省とEGATは電力不足解消の切り札として、今回の石炭発電所を計画した。
同省のアナンタポーン大臣は「政府は国家としてのさらなる経済成長を目指し、投資戦略を掲げているが、今のままでは電力不足が原因で進まないだろう」とし、タイ工業連盟のチェーン会長も「南部の電力使用量を見れば、逼迫度合いは誰の目にも明らかだ。早々に決定しなければ、今後のビジネス、観光業にも影響を及ぼすだろう」と懸念する。
一方、反対派は「CO2排出量が多い石炭発電所なのかがわからない。コストが掛からないという理由であれば道理が通らない」とし、民主党のアピシット元首相は「石炭に固執する必要はない。理由を伝えるべきだ」と疑問を呈する。
電力確保は国家戦略上、極めて重要なだけに、プラユット暫定首相の手腕が問われる。

 

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