鉄道“ドタバタ劇”

タイは被害者? 中国による工事は遅々として進まず、暗礁に乗り上げている

 

鉄道輸出、日本最大のライバル〝中国〞にほころびが見えてきた。遡ること約1年前、日本も狙っていたタイの鉄道複線化事業(バンコク〜サラブリー・ケンコーイ〜ナコーンラチャシーマー〜ノンカイ、ケンコイ〜ラヨーン・マプタプト計875㎞)は、中国に軍配。その後、日本はバンコク〜チェンマイ間の新幹線を利用した高速鉄道建設計画の覚書を結び、一勝一敗とさせ、安堵した。
ところが、である。日本よりも先に覚書を結び、当初は「2015年5月にも着工」と見出しが踊った中国が受注した鉄道事業は、16年2月、現在も工事は始まっていない。幾度となく繰り返された両国政府の交渉は難航。中国側は、タイ政府が求める金利の下げ幅に応じるどころか、整備費用も当初予定した約3690億バーツを大幅に超過する約5300億バーツを提示した。
9回目の交渉で、中国はタイが求めた2%で納得したものの、それでも日本の1.35%に比べれば明らかに高い。さらに、肝心の整備費用の削減については、計画路線の一部を〝単線〞にするという〝ウルトラC〞を提示してきたというから、驚きを隠せない。
中国側の言い分は、ナコーンラチャシーマー〜ノンカイ間の需要は見込めないから、単線で十分というもの。「コストを下げたいなら、これしかない」とまるで逆ギレ状態。しかも、ケンコイ〜ラヨーン・マプタプト間についても、当分の間、整備計画は延期したいというのだ。これならば、整備費約1600億バーツを節約できるという……。
日本のライバル? 中国の鉄道整備といえば、なりふり構わず好条件を突き付け、土壇場で中国案を採用させ、日本の敗北で幕を閉じたインドネシアでの高速鉄道計画を思い出さざるをえない。結果、受注後の交渉が遅々として進まず、タイとまったく同じように問題山積のまま、暗礁に乗り上げていると報道されたばかり。タイのインターネット上では「もうやめた方がいい」「最初からわかっていた」「どうなるか怪しい」といった疑問の声が上がっている。
いずれにせよ、当初予定の運行開始2018年に間に合うかは不透明のままだ。

この記事をSNSでシェア!

一番上へ戻る